少し前ですが、前回は「気」について書きました。
気・血・津液・精とは、漢方で設定した「生命活動を維持するために全身を流れるエネルギーのようなもの」という概念でしたね。
「血」もその一つです。
西洋医学で言えば「血液」に近いものですね。
ここでポイントは、「近いもの」であって、「そのもの」ではないことです。
漢方での血の働き(生理)や失調(病理)が、必ずしも西洋医学の血液の病気とは一致しないからです。
まずは、そんな血の働きを紹介します。
血は、前回お話しした「気」の推動作用(動かす)によって全身をめぐります。
そのめぐった血には、営養作用(全身に栄養を送る)、滋潤作用(全身に潤いを与える)、精神安定作用の3つがあります。
これらの働きが失調すると、いろいろと症状も出てきます。
血自体は、食事から得られた栄養素である水穀の精微(すいこくのせいび)と、呼吸から得られた清気(せいき)から生成されます。
食事を食べない・食べられないと原料である水穀の精微も作られないので血は生成されません。
また、せっかく食事をして水穀の精微ができても、何らかの原因でそれが血にならないこともあります。
すると、全身に血が不足して生理機能が低下した状態が起こります。
これが「血虚証(けっきょしょう)」です。
顔色が白い、唇の色に血色がない、爪の色が薄い、爪がもろい、疲れやすい、めまい、立ちくらみ、筋肉がけいれんする・つる、肌の乾燥、肌が痒い、目の乾き、髪のパサつき、便が乾燥、不眠、不安などの症状が出てきます。
女性では、血が不足すると月経周期が遅れる、月経が始まっても期間が短い、経血量が少ない、経血の色が薄いなどがあります。
治療としては、体内に充分に血が作られればいいわけです。
ご飯をしっかり食べているのに血虚証の場合は、体内で血が作られないということなので、四物湯や八珍湯、十全大補湯など血を作りやすくする薬を使用することがあります。
一方、ご飯が食べられないことで血虚証の場合は、しっかりご飯が食べられれば改善する可能性があるので、六君子湯や参苓白朮散など胃腸を立て直す薬を使用することがあります。
そして、ご飯が食べられるのに食べないで血虚証になっている方は、薬以前に、しっかりご飯を食べるようにすることが先決です。
※この他にもお薬はございます。ご相談いただければ、最適な漢方薬をご提案いたします。自己判断で選択はされないようお願いいたします。