ずいぶん前に、血虚について書きまして、(→血について・その1「血虚証」)そこでも漢方の血と西洋医学の血液は別モノだと書きました。
そこから一歩進んで、「貧血」です。
西洋医学でいう「貧血」ですが、これにはいくつか種類があります。
血液成分のうち、身体中に酸素を送り届ける役割を持つヘモグロビンを構成する鉄が不足することで、ヘモグロビンが減少してしまう貧血。
これが鉄欠乏性貧血です。
若い女性に多いと言われてるものです。
次に、ビタミンB12や葉酸の不足によって引き起こされるのが、巨赤芽球性貧血です。
その他に、血液を作る機能そのものが低下してしまう再生不良性貧血などもあります。
※ちなみに、朝礼で長時間立っていて倒れてしまうのは貧血ではありません。
西洋医学では、これらそれぞれに治療法・治療薬があります。
一方、漢方では、血の構成成分ということはほとんど考えません。
血は、食べ物から吸収された水穀の精微と体液である津液、そして生命の根源である精から生成されますが、それをいちいち論じません。
論じないというか、もし、これら3つのどれかが足りないのであれば、そちらの病理になると考えます。
つまり、血は血液ではなく、あくまで血なのです。
全身を潤し、営養しているのが血です。
その血が足りないのが血虚というわけです。
顔色や唇、爪などに血色がないなどの見た目の血の不足。
爪がもろい、疲れやすい、めまい、筋肉の痙攣、不眠などは営養されていない状態。
肌の乾燥、髪のパサつき、便の乾燥などは潤っていない状態。
また、女性では、血が不足してなかなか溜まらないので生理周期が長くなりますし、不足していれば出る量も少ないです。
始まってもすぐに終わってしまいますし、色も薄いことがあります。
貧血と重なる症状もいくつかあるので、イコールだと思ってしまいますが、このように見ると一概に貧血と血虚はイコールとは言えません。
「私は鉄が足りないので、そういう漢方薬を」と言われても、対応できない理由はここにあります。
自覚症状を丁寧に伺って、漢方では血が不足していると判断されれば、そのお薬をご提案いたします。