漢方の基本ルールは、
① 不足は補う
② 過剰は取り除く
③ 停滞は流す
の3つ。
つまり、ベースライン(本来の健康体)に戻すことが漢方のお仕事。 この季節になると出てくるワードで、「抵抗力」「免疫力」という言葉があります。
この言葉自体は、あまり漢方では登場しませんが、病気と闘う力という意味合いの概念はあります。
身体の外から襲い来る邪気とそれに対抗する正気が激しい戦い(邪正相争:じゃせいそうそう)をすれば発熱など激しい症状も出やすいし、正気が弱ければ簡単に重症化してしまいます。
そんな中で、冒頭の基本ルールを前提とした場合、漢方で抵抗力・免疫力はアップするのか?という疑問が生まれます。
私個人の感覚では、アップするということは、西洋医学の免疫学の観点でなら今より増えるのだと思えますが、漢方の観点となるとどうしても100%超えた力を持つイメージが出てしまいます。
いやいや、100%は超えないのよ、漢方は。
100%を超えた分は、過剰なものと見なされて逆に良くないんだから…という印象です。
とはいえ、じゃあ、そういうことはできないのかというと、そういうことではないとも思っています。
人間の本来の健康体は、暑さ・寒さなどの外敵にもそう簡単には負けない正気を持っていて、負けてしまう人は正気が100%ではないのだと。
であれば、できるかぎり100%の健康体に戻してあげれば、簡単には病気にかからないよね、ということだと思います。
だから、やはり「アップする」のではなく、「戻す」が正しいのかもしれません。
逆に言えば、普段から健康な方が、抵抗力を上げるためだ、カゼやインフルエンザの予防のためだと漢方薬を飲んでもあまり意味が無いとも言えます。
ゲームで、ダメージを受けていないのに回復の呪文を唱えるようなものです。
普段から、バランスの良い食事、適度な運動、充分な睡眠を取って、健康を維持していれば、そのような薬は必要がありません。以前に比べて体調を崩しやすい、そんな方は何らかの正気が不足するなどしている可能性があり、漢方は効果を期待できるかもしれません。